フリースタイルスキーの中でも、2人の選手が同時に滑り降りる「デュアルモーグル」は、その迫力とスピード感で高い人気を誇る種目です。これまではオリンピック種目ではなかったものの、2026年のミラノ・コルティナ五輪から正式種目として採用されることが決まり、大きな注目を集めています。
五輪採用に伴い、フリースタイルスキー デュアルモーグルのルール変更点は多岐にわたり、より公平で分かりやすい採点方式へと進化を遂げました。かつての判定方法と現在の基準では、勝敗を分けるポイントが大きく異なります。
この記事では、冬季スポーツを初めて観戦する方でも楽しめるよう、最新のルール変更点や採点の仕組み、そして選手たちの駆け引きについて優しく解説します。ルールを知ることで、モニター越しの観戦が何倍も熱いものになるはずです。
フリースタイルスキー デュアルモーグルのルール変更点と主な背景

デュアルモーグルにおいて、近年の最も大きな変化は「採点システムの透明化」と「オリンピックへの対応」です。かつては審判の主観が強く反映される傾向にありましたが、現在はより数値化された厳密な基準で競われるようになっています。
【ルールの主な変遷】
1. 審判が勝者を選ぶ方式から、ポイントの合計で競う方式へ変更
2. オリンピック正式種目採用に合わせた世界基準の統一
3. 選手の安全性とエンターテインメント性の両立を目的とした調整
なぜ採点方式が変わったのか
以前のデュアルモーグルでは、5人の審判がどちらの選手が優れていたかを「5対0」や「3対2」といった持ち点配分で決定する方式が主流でした。しかし、この方法では「どのプレーが具体的に評価されたのか」が観客や選手に伝わりにくいという課題がありました。
2026年のミラノ・コルティナ五輪での正式採用を見据え、国際スキー連盟(FIS)はより客観的な採点基準を導入しました。これにより、シングルモーグルと同様にターン、エア、スピードの各項目を数値化し、その合計点で勝敗を決める形式が一般的となりました。公平性が高まったことで、実力差がより明確に現れるようになっています。
この変更は、観戦者にとっても「どの部分で差がついたのか」をリアルタイムで理解しやすくするための工夫でもあります。数値として結果が出ることで、手に汗握る接戦の行方を論理的に楽しむことができるようになったのです。
2026年ミラノ・コルティナ五輪への道
デュアルモーグルが五輪の正式種目になったことは、スキー界にとって歴史的な出来事です。これまでの五輪ではシングルモーグルのみが実施されてきましたが、隣り合って滑るデュアル形式の持つ「分かりやすさ」と「競技性」が評価されました。
五輪種目化に伴い、ルールの細部まで厳格なガイドラインが設けられました。コースの設営基準や予選の進め方など、世界中どの大会でも同じ条件で競える環境が整えられています。これにより、選手たちはより高度な戦略を練る必要が出てきました。
日本勢にとっても、このルール変更は追い風となる可能性があります。精密な技術を持つ日本人選手にとって、採点が細分化されることは自分たちの強みをアピールする絶好の機会となるからです。世界最高峰の舞台に向けて、競技全体が熱を帯びています。
現在のデュアルモーグルが持つ魅力
ルールが刷新された現在のデュアルモーグルは、まさに「雪上の格闘技」と呼ぶにふさわしい激しさを備えています。隣を滑る相手の気配を感じながら、ミスをせずに最速で滑り降りる極限の精神状態が要求されるからです。
単に速いだけでは勝てず、ターンの美しさやジャンプの難易度も同時に求められる点がこの競技の奥深さです。ルール変更によって「スピード重視の選手」と「テクニック重視の選手」のどちらが有利かが明確になり、マッチメイクごとの戦略が見どころとなっています。
また、トーナメント方式で勝ち上がる様子は、スポーツ観戦初心者にとっても非常に分かりやすい構造です。一発勝負の緊張感の中で、新ルールに適合した選手たちがどのようなパフォーマンスを見せるのかが、今後の大きな注目点と言えるでしょう。
最新の採点方式と審査基準のポイント

現在のデュアルモーグルでは、ターンの質、エアの難易度と完成度、そして滑走スピードの3要素が合算されて順位が決まります。このバランスを理解しておくと、中継を見ている時の楽しみが格段に増えるでしょう。
| 審査項目 | 配分比率 | チェックされるポイント |
|---|---|---|
| ターン(Turn) | 60% | 上体の安定、板のコントロール、ライン取り |
| エア(Air) | 20% | ジャンプの高さ、空中姿勢、着地の安定 |
| スピード(Speed) | 20% | コースを滑り降りる速さ(タイム) |
ターンの評価基準とその重要性
配点の6割を占めるターンは、モーグル競技において最も重要な要素です。審判は、選手がコブに対してどのように板を当てているか、上半身が揺れずに安定しているか、そして最短距離であるフォールラインをまっすぐ滑っているかを厳しくチェックします。
以前のルールに比べ、現在の採点では「ターンの質の差」がより得点に反映されやすくなりました。ただコブをクリアするだけでなく、いかにスムーズでリズミカルな動きを維持できるかが勝負の分かれ目となります。足首や膝を柔軟に使った衝撃吸収の技術は、まさに芸術と言えるでしょう。
観戦時には、選手の膝がどれだけ細かく動いているか、そして肩のラインが地面に対して平行を保てているかに注目してみてください。一流の選手ほど、激しいコブの中でも上体が静止しているかのように見えるものです。
エア(空中演技)の加点ポイント
コース途中に設置された2箇所のジャンプ台で行われる「エア」は、20%の配点を持っています。ここでは、ジャンプの高さや飛距離だけでなく、空中での姿勢の美しさ、そして回転技の難易度が評価の対象となります。
ルール変更点として注目すべきは、着地の判定がより厳密になったことです。着地した瞬間にバランスを崩したり、次のターンへスムーズに移行できなかったりすると、大きな減点対象となります。デュアル形式では相手より早く飛びたい焦りが出やすいため、この正確性が勝敗を大きく左右します。
最近では、斜めに回転する「コークスクリュー」や、複雑なグラブ(板を掴む動作)を組み合わせる選手が増えています。難易度の高い技を完璧に決めた時の爆発的な加点は、逆転劇を生む大きな要素となっています。
スピードが勝敗に与える影響
残りの20%を占めるのがスピードです。デュアルモーグルでは隣の選手よりも早くゴールすることが視覚的な勝利に直結しますが、採点上は「設定された基準タイム」に対してどれだけ速かったかが計算されます。
かつてのデュアルモーグルでは「とにかく先にゴールすれば勝ち」という印象が強かったのですが、新ルールではスピードの配点が20%に固定されています。つまり、どれだけ早くゴールしても、ターンやエアでミスがあれば合計点で逆転される可能性があるのです。
この配分が、競技に絶妙な駆け引きをもたらしています。相手を追い越そうとしてスピードを出しすぎるとターンが乱れ、逆に慎重になりすぎるとスピードポイントを失います。このバランスを極限状態でコントロールする技術こそが、トップ選手の証です。
競技進行とトーナメント方式の仕組み

デュアルモーグルは、予選と決勝トーナメントの2段階で進行するのが一般的です。特に決勝のノックアウト方式は、1対1の対決が続くため、どのスポーツよりもドラマチックな展開が期待できます。
予選ラウンドの実施方法
大会によって異なりますが、現在の多くの国際大会では、まずシングル形式で予選を行い、上位16名または32名が決勝トーナメントに進出する形をとっています。これにより、実力のある選手が確実に決勝に残る仕組みになっています。
予選では「自分自身の滑り」に集中できるため、最高難易度の技に挑戦する選手も多く見られます。ここで高得点を叩き出しておくことは、決勝での精神的な優位性にもつながります。また、予選のタイムは決勝でのコース選択権にも影響するため、非常に重要です。
観戦する際は、予選での得点差がどれくらいあるかを確認しておくと、決勝トーナメントでの対戦カードを見た際、どちらが優勢かを予想する楽しみが生まれます。下位合格の選手が上位選手を倒す「ジャイアントキリング」も、この競技の醍醐味です。
ノックアウト方式の緊張感
決勝トーナメントは、負けたら即敗退のノックアウト方式です。2人の選手が同時にスタートし、同時に滑ることで、お互いのスピードやミスが直接目に入ります。この「相手を意識せざるを得ない状況」が、デュアルモーグル最大の特徴です。
ルール変更により、毎ヒート(対戦)ごとに詳細なスコアが出るようになったため、選手は「前の滑りでの課題」を即座に修正して次に臨む必要があります。連戦となるため、スタミナと集中力の持続が不可欠です。勝ち進むほどにコース状況も変化するため、対応力も試されます。
また、デュアル形式特有のルールとして、一方の選手が転倒しても、もう一方の選手はゴールまで滑り切らなければなりません。最後まで何が起こるか分からないドキドキ感は、他のウィンタースポーツにはない特別な魅力と言えるでしょう。
コースの公平性を保つための規定
デュアルモーグルでは、2つのコース(赤と青)を公平に設定することが厳格にルール化されています。コブの配置やジャンプ台の角度が左右で異なると、不公平が生じるからです。コース整備スタッフは、ミリ単位の精度でコースを作り上げます。
最新のルールでは、コース幅やセパレートライン(2つのコースを仕切る線)の基準も細かく定められています。選手が自分のコースをはみ出して相手を妨害した場合は、失格となる厳しいペナルティが存在します。安全に、かつ公正に競うための工夫が随所に凝らされているのです。
観戦中は、カメラの角度によって左右のコースの見え方が変わることもありますが、基本的には全く同じ条件になるよう設計されています。どちらのコースが滑りやすそうか、選手の好みはあるのかといった視点で観察するのも面白いでしょう。
選手に求められる戦略と最新テクニック

ルール変更に伴い、選手たちが採用する戦略も大きく変化しました。単なる技術の競い合いだけでなく、いかにして審判に「質の高い滑り」を印象づけるかという心理戦の側面が強まっています。
選手は、滑走前に自分の滑りの構成(技の種類や難易度)を申告します。これにより、審判は予定通りの技が正確に行われたかを厳密に判定できるようになっています。
リスクとリターンのバランス戦略
現代のデュアルモーグルにおいて、選手が最も頭を悩ませるのが「難易度を上げるか、完成度を優先するか」という選択です。高難易度のエア(3回転など)は大きな加点が期待できますが、着地でミスをすればターン得点を大きく失うことになります。
特にデュアル形式では、隣の選手が自分より速く滑っていると焦りが生じ、無理な体勢でジャンプに突っ込んでしまう場面が見られます。トップ選手は、自分の実力の8割から9割程度で確実に滑り切る「安定感」を重視しつつ、勝負どころで100%の力を解放する戦略を使い分けています。
ルールの変更により、微細なミスも点数に響くようになったため、「ミスをしないこと」そのものが強力な武器になっています。派手な技に目を奪われがちですが、安定した滑りを継続できる選手こそが、トーナメントを勝ち上がる強さを持っています。
スピードをコントロールする技術
スピードポイントが20%あるため、速さは重要な要素ですが、速すぎることのリスクも増大しています。現代の選手たちは、コブの裏側をいかに効率よく使い、加速と減速をミリ秒単位でコントロールするかという高度な技術を磨いています。
具体的には、「カービングターン」と呼ばれる技術を使い、エッジを効果的に立てることで速度を維持します。一方で、スピードが出すぎた際にはコブの頂点を利用してわずかにブレーキをかけるなど、見た目以上に複雑な足捌きを行っています。
ルール上、タイム差が得点に換算されるため、コンマ数秒の遅れが致命傷になることもあります。選手たちがゴールラインを切った瞬間にタイマーを見つめる表情からは、この20%の配点が持つ重みが伝わってきます。
相手を意識した「駆け引き」
デュアルモーグルの醍醐味は、隣の選手をどう揺さぶるかという駆け引きにあります。わざと序盤にスピードを上げて相手の焦りを誘ったり、逆にジャンプで高い完成度を見せつけてプレッシャーを与えたりする心理戦が繰り広げられています。
最近の傾向として、第1エア(最初のジャンプ)での出来栄えがその後の滑りに大きく影響することが分かっています。ここで完璧な空中姿勢を見せれば、相手は「後半で取り返さなければならない」という心理に陥り、ミスを誘発しやすくなるのです。
ルールが明確化されたことで、こうした戦略の有効性も高まりました。観客席や画面越しからも、選手同士の視線の動きや、スタート前のルーティンからその気迫を感じ取ることができるはずです。
観戦がもっと楽しくなる判定の裏側

モーグルの採点は一見すると複雑ですが、審判がどこを見ているかという「判定の裏側」を知ることで、観戦の解像度は一気に上がります。特に減点対象となるプレーを知っておくと、滑りの良し悪しが瞬時に判断できるようになります。
【審判が厳しくチェックする減点ポイント】
・膝が離れてしまい、脚がバラバラに見える
・着地した瞬間に手が雪面についてしまう(ハンドタッチ)
・コブに弾かれてラインが大きく横にずれる
・ジャンプの踏切で板が揃っていない
同点だった場合の「タイブレーク」ルール
もし合計得点が全く同じになった場合、どうやって勝敗を決めるのでしょうか。最新のルールでは、明確な優先順位が定められています。一般的には「ターンの得点が高い方」が勝者となるケースが多いです。
これは、モーグルの本質がターンにあるという考え方に基づいています。ターンでも同点の場合は、エアの得点、さらにそれも同じならスピードの速さといった順番で比較されます。稀にすべての項目が同点になることもありますが、その場合は審判の最終判断や、予選順位が考慮されることもあります。
このように、同点時のルールを知っていると、際どい接戦の結果を待つ際も「今の滑りならターン得点でこっちが勝つはずだ」といった高度な予想を楽しむことができます。
転倒やコースアウトの扱い
デュアルモーグルで最もショッキングな場面は、選手の転倒です。ルール上、転倒してもすぐに立ち上がって滑り続ければ競技継続とみなされますが、大幅なタイムロスとターン得点の減点は避けられません。
もしコースアウト(セパレートラインを越えたり、コース外に出たりすること)をしてしまった場合は、その時点でそのヒートは敗戦となります。また、相手選手の進路を妨害したとみなされた場合も失格となります。デュアル形式は距離が近いため、これらのルールは厳格に運用されています。
選手が途中で止まってしまったとしても、最後まで諦めずにゴールする姿には、採点以上の感動があります。また、相手のミスを喜ぶのではなく、お互いの健闘を称え合うフィニッシュエリアでの光景も、このスポーツの素晴らしい一面です。
審判が見ている「板の動き」と「静寂」
トップレベルの審判は、選手の板が雪面を叩く「音」や、雪しぶきの上がり方まで見ています。理想的なターンは、板が雪面をなめるように進み、無駄な抵抗がない滑りです。音が静かで、スムーズに見える滑りほど高評価につながります。
また、上半身がいかに「静止」しているかも重要なポイントです。激しい衝撃の中でも頭の位置が上下に動かず、視線が常に一定方向を向いている選手は、体幹が強くコントロール能力が高いと判断されます。これを専門用語で「アブソープション(吸収)」と呼びます。
観戦の際は、選手の頭の位置を固定して見てみてください。足元が激しく動いているのに、顔がほとんど揺れていない選手がいれば、それは世界トップクラスの技術の持ち主です。ルールの本質は、この究極の身体操作を評価することにあります。
フリースタイルスキー デュアルモーグルのルール変更点を押さえて観戦を楽しもう
フリースタイルスキーのデュアルモーグルは、2026年ミラノ・コルティナ五輪への採用を契機に、より公平でスリリングな競技へと進化を遂げました。今回解説したルール変更点を振り返ると、採点方式が明確になったことで、技術の高さがより正当に評価される時代になったと言えます。
ターン60%、エア20%、スピード20%という配分は、選手の戦略を多様化させました。単に速さを競うだけでなく、美しさと難易度を極限まで追求する姿勢が、この競技の魅力を支えています。1対1のトーナメント方式が生み出す緊張感は、一度体験すると目が離せなくなるはずです。
日本には世界屈指の実力を持つ選手が多く、新ルールへの適応も進んでいます。五輪でのメダル獲得に向けた戦いは、すでに始まっています。この記事で紹介した採点ポイントや駆け引きの裏側に注目しながら、ぜひ冬の熱い戦いを応援してください。ルールを知ることで見える景色が変わり、観戦がさらに特別な時間になることを願っています。


