持続可能なオリンピックを実現するミラノ・コルティナ2026:既存施設の活用例と新しい大会の形

持続可能なオリンピックを実現するミラノ・コルティナ2026:既存施設の活用例と新しい大会の形
持続可能なオリンピックを実現するミラノ・コルティナ2026:既存施設の活用例と新しい大会の形
冬季オリンピック全般

2026年にイタリアで開催される「ミラノ・コルティナ冬季オリンピック・パラリンピック」は、これまでの大会とは一線を画す大きな特徴を持っています。その最大の特徴が、徹底した「持続可能性(サステナビリティ)」の追求です。今回の大会では、新しく豪華な競技場を建設するのではなく、イタリア各地に点在する既存施設を最大限に活用する計画が進められています。

かつてのオリンピックで見られた、莫大な予算をかけた新設施設の建設や、大会後の維持管理の難しさといった課題を解決するために、ミラノ・コルティナ大会はどのようなアプローチを取っているのでしょうか。本記事では、この注目の大会が示す「既存施設の活用例」を詳しくご紹介しながら、冬季スポーツ観戦がより楽しみになるような持続可能な大会の魅力についてお伝えします。

  1. 持続可能なオリンピックを目指すミラノ・コルティナ大会の基本方針と既存施設の活用状況
    1. オリンピック・アジェンダ2020が掲げる「新しい基準」
    2. 驚異の既存・仮設利用率90%超えという数字
    3. 広域分散開催がもたらす地域社会へのメリット
  2. ミラノ市街地で注目したい既存施設の活用例と競技会場
    1. 伝統の聖地「サン・シーロ」での華やかな開会式
    2. 展示場が氷の舞台に変わる「フィエラ・ミラノ」の工夫
    3. 既存のアリーナをアップデートした「メディオラヌム・フォーラム」
  3. 山岳エリアに息づく歴史的な既存施設の再利用
    1. 1956年大会の遺産を継承するコルティナのスキー会場
    2. 冬季スポーツのメッカ「アンテルセルヴァ」のバイアスロン会場
    3. 世界最高峰の難コース「ステルヴィオ」を活用したボルミオ
  4. 古代遺跡や伝統を活かしたユニークな会場演出
    1. ローマ時代の円形競技場「アレーナ・ディ・ヴェローナ」での閉会式
    2. 北イタリアの豊かな自然と調和するヴァル・ディ・フィエンメ
    3. 既存ホテルを活用する分散型の選手村という新しい形
  5. 大会後に残されるサステナブルなレガシーと都市開発
    1. 選手村から学生寮へ!ミラノ・ポルタ・ロマーナ地区の再生
    2. 環境負荷を最小限に抑えるリノベーションの重要性
    3. 冬季スポーツ観戦の楽しみを広げる持続可能な観光モデル
  6. 持続可能なオリンピックを実現するミラノ・コルティナ大会の意義とまとめ

持続可能なオリンピックを目指すミラノ・コルティナ大会の基本方針と既存施設の活用状況

2026年のミラノ・コルティナ大会は、国際オリンピック委員会(IOC)が掲げる「オリンピック・アジェンダ2020」の理念を本格的に反映した、初めての冬季大会となります。このセクションでは、なぜ既存施設の活用がこれほどまでに重視されているのか、その背景と全体像を紐解いていきます。

オリンピック・アジェンダ2020が掲げる「新しい基準」

ミラノ・コルティナ大会の根幹にあるのは、IOCが2014年に採択した中長期改革案「オリンピック・アジェンダ2020」です。この改革案では、大会のコスト削減と環境負荷の低減を目的として、開催都市に対して「既存施設や仮設施設の優先的な利用」を強く推奨しています。

以前のオリンピックでは、開催都市が最新鋭の施設をゼロから建設することが一般的でしたが、その結果として「負の遺産(利用されない巨大施設)」が生まれることが社会問題となっていました。ミラノ・コルティナ大会は、この負の連鎖を断ち切り、地域にすでにある資産を賢く使うことで、無理のない持続可能な大会運営を証明しようとしています。

これは、単なるコストカットではなく、開催地の伝統や歴史をリスペクトし、未来の世代に価値ある環境を残すための知恵でもあります。観戦する側にとっても、イタリアの歴史ある競技場が再び世界の表舞台に立つ姿は、非常に感慨深いものになるでしょう。

驚異の既存・仮設利用率90%超えという数字

ミラノ・コルティナ大会の最大の見どころは、その「既存施設利用率」の高さにあります。公式発表によると、競技会場の90%以上が既存の建物、あるいは一時的に設置される仮設施設で構成されています。これは、過去のオリンピックと比較しても極めて高い数字です。

具体的には、15の競技会場のうち、完全に新しく恒久的な施設として建設されるのは、アイスホッケーの一部会場のみという徹底ぶりです。これにより、二酸化炭素の排出量を抑制するだけでなく、自然環境への影響も最小限に抑えることができます。冬の美しい自然の中で行われるスポーツだからこそ、その舞台を守るという姿勢が貫かれています。

こうした取り組みにより、ミラノ・コルティナ大会は「世界で最もエコな冬季大会」の一つとして期待されています。私たちは、イタリアの街並みや自然に溶け込んだ会場で、世界最高峰のパフォーマンスを安心して楽しむことができるのです。

広域分散開催がもたらす地域社会へのメリット

既存施設を活用するため、今回の大会は「ミラノ」と「コルティナ・ダンペッツォ」という、約400キロメートルも離れた2つの拠点を中心とした「広域分散開催」というスタイルをとっています。これは、一つの都市に負担を集中させないための工夫でもあります。

イタリア北部の各地(ロンバルディア州、ヴェネト州、そしてトレンティーノ・アルト・アディジェ自治州)に競技を分散させることで、既存のスポーツインフラを有効に使い分けることが可能になりました。例えば、バイアスロンなら世界的な実績を持つアンテルセルヴァ、アルペンスキーなら歴史あるコルティナといった具合に、すでに専門性の高い設備が整っている地域をそのまま活用しています。

このアプローチは、地域経済の活性化を広範囲に及ぼすだけでなく、大会後もそれらの施設が地域のスポーツ振興に役立ち続けるという「ポジティブなサイクル」を生み出します。観戦に訪れるファンにとっても、イタリア各地の異なる魅力を味わいながらスポーツを楽しめるという、贅沢な体験につながるでしょう。

ミラノ市街地で注目したい既存施設の活用例と競技会場

国際都市ミラノは、文化やファッションの拠点であると同時に、スポーツの熱狂に包まれる街でもあります。ここでは、ミラノ市内の有名な既存施設がどのようにオリンピックの舞台へと姿を変えるのか、具体的な事例を見ていきましょう。

伝統の聖地「サン・シーロ」での華やかな開会式

2026年の幕開けを飾る開会式の舞台は、サッカーファンなら誰もが知るイタリアの聖地「サン・シーロ(スタディオ・ジュゼッペ・メアッツァ)」です。ACミランとインテル・ミラノの本拠地として、数々の伝説的な試合が行われてきたこのスタジアムが、冬季オリンピックの開会式会場として選ばれました。

オリンピックのために新しいメインスタジアムを建てるのではなく、8万人もの収容人数を誇る既存の歴史的スタジアムをそのまま利用することは、持続可能性を象徴する大きな決断です。これまで数え切れないほどの熱狂を生んできたサン・シーロの空気感が、オリンピックという世界的な祭典とどのように融合するのか、期待が高まります。

スタジアム自体が持つ伝統と重厚感は、新設の建物では決して出せないものです。選手たちがこのグラウンドに入場する瞬間、サッカーの歴史と冬のスポーツの祭典が交差し、観客に忘れられない感動を与えてくれるはずです。

展示場が氷の舞台に変わる「フィエラ・ミラノ」の工夫

ミラノにおける持続可能な会場活用の興味深い例が、国際見本市会場である「フィエラ・ミラノ(ロー)」の利用です。ここは普段、世界最大級のデザインイベントや見本市が開催される広大なスペースですが、大会期間中はスピードスケートやアイスホッケーの会場として活用されます。

通常、スピードスケート用のリンクなどは非常に巨大な建物が必要になりますが、大会後にその規模の施設を維持し続けることは容易ではありません。そこで、既存の巨大なホールの中に仮設のリンクを設置し、大会が終われば元の展示場に戻すという「一時的な用途変更」が行われます。これにより、無駄な建物を残さずに済みます。

展示場という既存のインフラを活用することで、観客の輸送やセキュリティ確保といった運営面でも、すでに実績のある設備をそのまま利用できるという大きなメリットがあります。ミラノらしい機能的かつスマートな会場の使い方は、今後のオリンピックのモデルケースとなるでしょう。

既存のアリーナをアップデートした「メディオラヌム・フォーラム」

フィギュアスケートとショートトラックの競技が行われるのは、ミラノ近郊のアッサゴにある既存の多目的アリーナ「メディオラヌム・フォーラム」です。この施設は、コンサートやバスケットボールの試合などで日常的に使用されている、地元の人々に馴染み深い場所です。

オリンピックに向けて、施設内のバリアフリー化や最新の空調システムの導入、そして氷の状態を一定に保つための冷却技術のアップデートが行われます。ゼロから建てるのではなく、「より良く使い続けるための投資」を行うことで、大会後も地域のスポーツ・文化拠点としての価値を高めることができます。

観客席との距離が近いこのアリーナは、フィギュアスケートの繊細な表現や、ショートトラックの迫力ある駆け引きを間近で体感するのに最適な環境です。長年愛されてきた会場だからこその落ち着きと、世界大会ならではの興奮が同居する、特別な空間になること間違いありません。

ミラノエリアの主要会場リスト

会場名 競技・役割 状況
サン・シーロ 開会式 既存スタジアム
フィエラ・ミラノ スピードスケート、アイスホッケー 既存展示場に仮設リンク
メディオラヌム・フォーラム フィギュアスケート、ショートトラック 既存アリーナ

山岳エリアに息づく歴史的な既存施設の再利用

冬季オリンピックの華といえば、雪上競技が行われる美しい山岳地帯です。コルティナ・ダンペッツォをはじめとする山々の会場でも、過去の大会の遺産や既存のトップクラスのコースが再利用されます。

1956年大会の遺産を継承するコルティナのスキー会場

コルティナ・ダンペッツォは、1956年に一度冬季オリンピックを開催した歴史あるリゾート地です。今回の大会では、当時の伝統を受け継ぎつつ、女子アルペンスキーなどの競技会場として「トファーネ(Tofane)」のコースが活用されます。

このコースは、毎年のようにアルペンスキーのワールドカップが開催されている世界屈指の難コースです。すでにプロの競技会を運営するための設備や中継用のインフラが整っているため、オリンピックのために山を切り開く必要がありません。歴史の重みを感じさせる斜面を選手たちが滑り降りる姿は、まさに伝統の継承です。

また、既存のコースを使用することは、環境保護の観点からも非常に重要です。アルプスのデリケートな自然環境に新たな傷をつけず、今あるコースを最高に磨き上げることで、選手たちに最高の舞台を提供します。観客は、美しい白雲岩の山々を背に、伝統と革新が融合したレースを堪能できるでしょう。

冬季スポーツのメッカ「アンテルセルヴァ」のバイアスロン会場

バイアスロンの競技会場として選ばれたのは、イタリア北部アルト・アディジェ地方にある「アンテルセルヴァ(アレーナ・アルト・アディジェ)」です。ここは「バイアスロンの聖地」とも呼ばれ、毎年ワールドカップが開催されるなど、世界で最も熱狂的なファンが集まる場所として知られています。

この会場の最大の強みは、すでにバイアスロンに必要な射撃場、コース、観客席、運営システムが「完璧な状態」で揃っていることです。新たな土地を開発することなく、世界最高水準の施設をそのままオリンピック仕様に微調整するだけで済むため、非常に効率的で持続可能な選択と言えます。

また、アンテルセルヴァは標高が高く、雪質が良いことでも定評があります。地元の人々が長年大切にしてきたこの施設がオリンピックの舞台になることは、地域にとっても大きな誇りです。世界中のファンが、使い込まれた既存施設が生む「本物の雰囲気」の中で、スリリングなレースを見守ることになります。

世界最高峰の難コース「ステルヴィオ」を活用したボルミオ

男子アルペンスキーの会場となるのは、ボルミオにある「ステルヴィオ(Stelvio)」という非常に難易度の高い既存コースです。ここは、冬季スポーツの愛好家なら誰もが憧れる伝説的な斜面であり、アルペンスキー競技の真髄を味わうことができる場所です。

ボルミオもまた、長年にわたり国際的な大会を開催してきた実績があり、施設や輸送インフラがすでに確立されています。このように、世界的に評価されている既存のトップレベルの競技場をそのまま活用することで、大会の質を落とすことなく、持続可能な運営を可能にしています。

新設のコースでは得られない、コース特有の癖や歴史を知り尽くしたファンも多く、その熱気は会場をさらに盛り上げるでしょう。また、今回のオリンピックから正式種目となる「山岳スキー(スキーモ)」の競技もこのボルミオ周辺で行われる予定で、新しいスポーツが歴史ある場所で産声を上げる瞬間を目撃できます。

コルティナ・ダンペッツォで開催されるカーリングの会場「オリンピック・アイス・スタジアム」も、1956年のオリンピックで使用された歴史的な既存施設です。当時の面影を色濃く残しながら、現代の競技基準に合わせたリノベーションが行われています。

古代遺跡や伝統を活かしたユニークな会場演出

ミラノ・コルティナ大会が「既存施設の活用」において世界中を驚かせたのが、スポーツ施設以外の歴史的建造物を会場として組み込んだことです。イタリアならではの豊かな歴史が、大会のフィナーレを彩ります。

ローマ時代の円形競技場「アレーナ・ディ・ヴェローナ」での閉会式

2026年大会で最も注目される会場の一つが、ヴェローナにある「アレーナ・ディ・ヴェローナ」です。これは約2,000年前に建てられた古代ローマ時代の円形競技場であり、現在は世界最高峰の野外オペラ会場として親しまれている世界遺産です。

驚くべきことに、この歴史の結晶とも言える場所で、オリンピックの閉会式とパラリンピックの開会式が行われます。新しく閉会式用の広場を作るのではなく、数千年にわたり人々が集い、感動を分かち合ってきた場所をそのまま活用するという選択は、持続可能性の極みと言えるでしょう。

星空の下、古代の石壁に囲まれた空間でオリンピックの聖火が消える瞬間を想像してみてください。それは、現代のスポーツの祭典が人類の長い歴史の一部になるような、幻想的で圧倒的な体験になるはずです。既存施設の活用が、単なる合理性だけでなく、最高級の「物語」を生み出す好例と言えます。

北イタリアの豊かな自然と調和するヴァル・ディ・フィエンメ

ノルディックスキー(クロスカントリー、スキージャンプ、ノルディック複合)の舞台となるのは、「ヴァル・ディ・フィエンメ」です。このエリアは、これまで3回のノルディックスキー世界選手権を開催した実績を持ち、周辺の自然環境とスポーツ施設が美しく調和しています。

スキージャンプ台やクロスカントリー用のスタジアムは、すでにトップクラスのものが存在しており、それらを最小限の改修で再利用します。特にスキージャンプは、巨大な設備を新設するとその後の維持が課題となりますが、すでに地元で日常的に使われている既存施設を活用することで、その心配もありません。

この地域では、森林資源を大切にする持続可能な林業が盛んで、大会運営においても地元の木材を多用するなど、地域文化に根ざした取り組みが見られます。観客は、アルプスの森に囲まれた既存のスタジアムで、静寂と熱狂が交互に訪れるノルディック競技の醍醐味を味わうことができるでしょう。

既存ホテルを活用する分散型の選手村という新しい形

今回の大会では、選手の宿泊施設である「選手村」の考え方も非常にサステナブルです。大規模な集合住宅を一気に建てる代わりに、コルティナやボルミオなどの山岳エリアでは、「既存のホテル」を選手村として活用する計画が採用されています。

大会後にゴーストタウン化するリスクを避けるため、現地の観光資源である既存の宿泊施設をそのまま利用し、地域のホスピタリティ産業を直接支援する形をとっています。これにより、新たな土地開発の必要がなく、環境への負荷も大幅に軽減されます。

選手たちは、地元イタリアの温かいもてなしをダイレクトに受けることができ、ファンもまた、既存の観光インフラを通じて大会の熱気を共有することができます。このように、街全体がオリンピックの機能を分担することで、大会が街の負担にならず、むしろ街の魅力を引き出す「共生」の形が実現されています。

大会後に残されるサステナブルなレガシーと都市開発

既存施設の活用は、単に「大会を安く済ませる」ためのものではありません。大会が終わった後、イタリアの人々がどのような暮らしを享受できるのか。その未来に向けた「レガシー(遺産)」の設計が緻密に行われています。

選手村から学生寮へ!ミラノ・ポルタ・ロマーナ地区の再生

ミラノに建設される唯一の「まとまった居住エリア」としての選手村は、ミラノ市内の旧鉄道車両基地跡地である「ポルタ・ロマーナ地区」に建てられています。ここは長年、開発が進んでいなかった産業跡地でしたが、オリンピックをきっかけに大規模な都市再生プロジェクトが進んでいます。

最も素晴らしい点は、大会期間中に選手たちが宿泊した後は、そのまま「学生寮や社会福祉住宅」として活用されることが確定していることです。ミラノでは学生向けの住宅不足が深刻な社会問題となっているため、この施設は大会後、すぐに地域の課題解決に貢献する貴重なインフラとなります。

既存の「土地」というリソースを再生し、大会後も必要とされる形へとスムーズに移行させるこの計画は、都市型オリンピックにおける理想的なレガシーの形です。未来の学生たちが、かつて世界のアスリートが過ごした部屋で学び始める光景は、オリンピックが街に与えるポジティブな影響の象徴となるでしょう。

環境負荷を最小限に抑えるリノベーションの重要性

今回の大会で多くの施設が選んだ「リノベーション」という手法は、建築業界においても非常に重要なメッセージを持っています。新築に比べて資材の消費を抑え、既存の構造を活かすことで、廃棄物の削減にもつながります。

例えば、ミラノ市内のスケート会場やコルティナのボブスレー・スライディングセンター(※現在、既存施設の活用を含めた検討が継続中)などは、最新の冷却技術や省エネ設備を導入するリノベーションが中心となります。これにより、「古くて使いにくい施設」が「環境に優しく使いやすい施設」へと生まれ変わります。

リノベーションを通じて施設の寿命を延ばすことは、究極のサステナビリティです。大会が終わった後も、地元の子供たちが同じ氷の上で滑り、トップアスリートを目指す環境がアップデートされた状態で残る。このことこそが、施設活用が生み出す目に見えない大きな価値だと言えるでしょう。

冬季スポーツ観戦の楽しみを広げる持続可能な観光モデル

既存施設を活用した分散開催は、観光のあり方にも変化をもたらします。一箇所に観客が密集するのではなく、イタリア北部の広大なエリアを巡る「周遊型」の観戦が楽しめるようになります。これは、特定の場所への観光公害を抑え、持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)を実現する一助となります。

すでに鉄道網や交通インフラが整っている既存の都市やリゾート地を結ぶことで、新たな道路建設を最小限に留めています。また、イタリア政府や組織委員会は、大会期間中の公共交通機関の利用を強く奨励しており、環境に配慮した移動手段をパッケージとして提供する予定です。

観客は、世界遺産のヴェローナで歴史を感じ、ミラノで最先端のファッションに触れ、アルプスで壮大な雪景色を楽しむ。既存の街の魅力をそのまま味わうこのスタイルは、単なるスポーツ観戦を超えた、イタリアの文化を深く知る「持続可能な旅」を私たちに提供してくれます。

2026年大会の持続可能性は、施設の活用だけでなく、運営スタッフの移動や廃棄物のリサイクル率、再生可能エネルギーの使用など、多岐にわたる項目で厳格な基準が設けられています。

持続可能なオリンピックを実現するミラノ・コルティナ大会の意義とまとめ

まとめ
まとめ

2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピック・パラリンピックは、既存施設の活用を通じて、これからの国際大会が歩むべき新しい道を示しています。新しく何かを作るのではなく、今あるものを大切に使い、より良い形で未来へ引き継ぐというイタリア流の「サステナブル」は、私たち観戦者にも多くの気づきを与えてくれます。

最後にもう一度、今回の大会における既存施設活用のポイントを振り返ってみましょう。

ミラノ・コルティナ2026の重要ポイントまとめ

既存・仮設施設の活用率が90%以上であり、環境負荷とコストを大幅に削減している。
サン・シーロやアレーナ・ディ・ヴェローナといった、イタリアの歴史的象徴を競技や式典の会場として再利用する。
・フィエラ・ミラノ(展示場)をスピードスケート会場にするなど、既存インフラをクリエイティブに活用している。
・選手村を大会後に学生寮として転用するなど、地域の社会課題を解決するレガシーが設計されている。
・広域分散開催により、既存のスポーツリゾートや都市の魅力を活かした持続可能な観光モデルを提示している。

冬季スポーツの祭典を観戦するということは、単に勝敗を見届けるだけでなく、その舞台となる自然や街のあり方にも目を向けることでもあります。持続可能なオリンピックを体現するイタリアの美しい会場で、どのようなドラマが生まれるのか。2026年の開幕が、今から本当に待ち遠しいですね。伝統ある施設が新たな輝きを放つ瞬間を、ぜひ皆さんも注目してみてください。

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