冬季スポーツの華であるカーリングをテレビで観戦していると、選手たちの大きな叫び声が耳に残ります。特に「イエス!」や「ハード!」といった掛け声は印象的ですが、その意味や違いを正しく理解している方は意外と少ないかもしれません。氷上のチェスとも呼ばれる知的な戦略だけでなく、こうした叫び声の意図を知ることで、試合の興奮はさらに深まります。
この記事では、カーリングで頻繁に使われる叫び声の意味を初心者の方にも分かりやすく解説します。イエスとハードの決定的な違いはもちろん、ハリーやウォーといった独特な用語まで網羅しました。これを読めば、次にカーリングを観戦する際、選手たちが何を狙って叫んでいるのかが手に取るように分かるようになり、応援がもっと楽しくなるはずです。
カーリングの叫び声の意味とは?イエスやハードなど代表的な言葉を解説

カーリングの試合中に響き渡る叫び声は、単に気合を入れているわけではありません。これらはすべて、投げ放たれたストーンを理想の位置に導くための「指示」なのです。氷の上で戦う選手たちにとって、叫び声はチームの意思疎通に欠かせない重要なツールとなっています。
「イエス」はスウィーピングを開始する合図
試合中にもっとも頻繁に聞こえてくる「イエス」という言葉は、ブラシで氷をこするスウィーピング(掃くこと)を開始せよという指示です。ストーンを投げた後、その速度や曲がり具合を見て、目標地点に届かせる必要があると判断したときに発せられます。
氷を掃くことで摩擦熱が発生し、氷の表面に薄い水の膜ができます。これによりストーンの滑りが良くなり、より遠くまで届かせたり、曲がりを抑えたりすることが可能になります。つまり「イエス」は、ストーンをもっと先へ進めたいという意思表示なのです。
また、この指示は主にスキップと呼ばれる司令塔が出しますが、ストーンの近くにいるスイーパーが自ら判断して声を出すこともあります。一瞬の判断が勝敗を分けるため、迷いのない大きな声で「イエス」と叫ぶことがチームの士気にもつながります。
「ハード」はもっと強く速く掃くこと
「ハード」という叫び声は、文字通り「一生懸命に」「強く」という意味を持っています。すでにスウィーピングをしている状態、あるいはこれから始める際に、通常よりも強い力で、かつ高速にブラシを動かすよう求める指示です。
ストーンの速度が予想以上に落ちてしまった場合や、どうしてもあと数十センチ距離を伸ばしたいという切迫した場面でよく使われます。ハードと言われた選手は、全体重をブラシに乗せて激しく氷をこすります。これは非常に体力を消耗する過酷な作業です。
全力で氷を掃く姿はカーリングの醍醐味の一つと言えるでしょう。ハードの指示が飛ぶときは、その1投が試合の行方を左右する重要な局面であることが多いため、観戦側も思わず力が入る瞬間です。選手の表情や動きの激しさにも注目してみてください。
イエスとハードの違いと使い分け
「イエス」と「ハード」は似ているようで、明確な使い分けが存在します。簡単に言えば、「イエス」はスウィーピングのオン・オフを切り替えるスイッチのような役割であり、「ハード」はさらにその強度を上げるためのギアチェンジのような役割です。
【イエスとハードの使い分け例】
・イエス:予定通りのラインに乗せるために、スウィーピングを始めてほしいとき。
・ハード:速度が足りず、全力で距離を伸ばさないと失敗してしまう緊急事態のとき。
基本的には「イエス」で掃き始め、状況に応じて「ハード、ハード!」と追加の指示が出る流れが一般的です。逆に言えば、最初から「ハード」と叫ばれるときは、投げた直後にかなりの調整が必要だと判断されたことを意味しており、緊迫したシーンであると言えます。
このように、指示の種類によってストーンの現在の状態を推測することができます。言葉の強さや繰り返す回数からも、その1投にかける選手の思いが伝わってくるため、違いを意識して聞き分けるとより試合展開が理解しやすくなります。
実は「イエス」ではなく「ヤップ」かも?
テレビの中継を聞いていると、「イエス」と言っているようにも聞こえますが、実は「ヤップ(Yep)」と叫んでいることも多いです。これは英語圏の選手が「Yes」を短く、発音しやすくした言い方で、日本チームもこれに倣って使っています。
「イエス」よりも「ヤップ」の方が、短く鋭く発声できるため、騒がしい会場内でも仲間の耳に届きやすいという利点があります。特に激しいスウィーピング中は息が切れるため、一音で伝えられる言葉が好まれる傾向にあります。
世界大会などを観戦していると、国によって若干の発音の違いがあることに気づくかもしれません。しかし、意味するところはすべて「掃け!」という共通の指示です。耳を澄ませて、チームごとにどのようなバリエーションがあるか探してみるのも面白いでしょう。
スウィーピングを指示する「ハリー」や「ウォー」の役割

カーリングの叫び声は「イエス」や「ハード」だけではありません。他にも重要な役割を持つ言葉がいくつかあります。これらを覚えることで、選手たちがストーンの軌道をどのようにコントロールしようとしているのか、より細かく把握できるようになります。
「ハリー」と「ハード」の微妙な違い
「ハリー(Hurry)」という言葉もよく聞かれます。直訳すると「急げ」という意味ですが、カーリングにおいては「ブラシを動かすスピードを速くしろ」という指示になります。「ハード」が力の強さに重点を置くのに対し、「ハリー」は回数に重点を置くニュアンスです。
実際には「ハリー・ハード!」と続けて叫ばれることが多く、これは「とにかく全力で、速く強く掃け」という最大級の指示になります。ストーンが止まりそうな位置から、あと一押しして円の中心に近づけたいという執念が感じられる言葉です。
特にラストストーンなど、1ミリの差で得点が変わる場面では、会場中に響き渡るような「ハリー!」の声が飛び交います。この声に応えて、スイーパーが限界を超えた動きを見せるシーンは、まさにカーリングのハイライトの一つと言えるでしょう。
掃くのを止める指示「ウォー」
「ウォー(Whoa)」または「ウオー」という叫び声は、馬を止めるときの掛け声に由来しており、カーリングでは「スウィーピングを止めろ」という意味で使われます。ストーンが十分に伸びていて、これ以上掃くと目標を通り過ぎてしまう場合に発せられます。
「イエス」がアクセルなら、「ウォー」はブレーキに近い役割を果たします。ただし、物理的なブレーキをかけるわけではなく、掃くのをやめることで氷の摩擦を戻し、自然に減速させることを狙っています。この判断も非常に繊細で、スキップの腕の見せ所です。
「ウォー」と言われた瞬間、スイーパーはピタッと動きを止めます。このメリハリの利いた動きも、チームの連携が取れている証拠です。指示を聞き漏らさず、即座に反応することが、ストーンをミリ単位の精度で止めることにつながるのです。
「クリーン」はゴミを取り除く合図
「クリーン(Clean)」という言葉は、激しく掃くのではなく、「ストーンの進行方向にある小さなゴミや氷の粒を軽く取り除け」という意味です。氷の上にほんの小さなホコリがあるだけでも、ストーンの軌道が変わってしまうことがあるため、非常に重要な作業です。
全力で掃く必要はないけれど、ラインを汚したくないという時に使われます。スイーパーはストーンの直前を優しくなでるようにブラシを動かします。これは「イエス」とは異なり、速度を伸ばすためではなく、あくまで現在のラインを維持するための守りの指示です。
派手さはありませんが、この「クリーン」の指示が正確に行われることで、投げ手の意図した絶妙なカーブが実現します。玄人好みの指示とも言える「クリーン」という声が聞こえたら、ストーンの美しい軌道に注目して観戦してみてください。
距離や強さを伝えるための「数字」による叫び声

カーリングの試合をじっくり見ていると、言葉だけでなく「1(ワン)」「5(ファイブ)」といった数字を叫んでいることに気づくでしょう。これらの数字は、氷の状態やストーンの速度を客観的に共有するための共通言語として機能しています。
1から11までの数字が表す意味
カーリングにおいて数字が叫ばれる場合、それは多くの場合「ストーンが止まる位置の予測」を表しています。一般的には1から11までの数字が使われ、氷上のエリアを細かく分割して表現しています。
例えば、1から3は手前のガードゾーン、4から10はハウス(円)の中の各位置、11は円を突き抜けてしまうことを指すのが一般的です。投げられた直後にスイーパーが「3!」と叫べば、それは「このままだと3の位置(ガード)で止まるよ」という意味になります。
このように数字を共有することで、スキップは「もっと掃いて5まで伸ばそう」といった具体的な判断を下せます。数字でのコミュニケーションは、個人の主観による「速い」「遅い」のズレをなくし、チーム全体の認識を一致させるために不可欠なのです。
氷の状態(ウェイト)を伝える重要性
投げられたストーンの強さのことを「ウェイト」と呼びます。スイーパーはストーンが手を離れた瞬間から、一定の距離を通過するまでの時間を体内時計やストップウォッチで計り、その情報を数字で叫びます。
「ウェイトは10(テン)!」と叫ばれれば、ハウスの奥まで届く十分な速さがあることを示します。これにより、掃くべきか、それともライン(曲がり具合)の調整だけに専念すべきかを瞬時に判断します。氷の状態は試合中も刻々と変化するため、この数字のやり取りが重要です。
数字の叫び声は、いわばリアルタイムのデータ報告です。最新のデータを共有し続けることで、チームは最適な軌道を描き出すことができます。言葉での指示の裏側には、こうした緻密な数字の計算が隠されていることを知ると、カーリングの奥深さがより伝わってきます。
誰が誰に向かって叫んでいるのか
叫び声の主な発信源は、ハウスの中で待機している「スキップ」と、ストーンと一緒に移動する2人の「スイーパー」です。基本的には、全体像を見ているスキップがスイーパーに対して「イエス」や「ハード」といった行動の指示を出します。
一方で、ストーンの速度を一番近くで感じているのはスイーパーです。そのため、スイーパーが「ウェイトは7!」とスキップに向かって情報を叫び、それを受けたスキップが「じゃあイエスだ!」と指示を返すという双方向のやり取りが行われます。
投球者は投げた後、基本的には声を出すことは少ないですが、自分の感触を伝えるために叫ぶこともあります。氷上の4人がそれぞれの役割に応じた情報を叫び合い、一つの「正解」を導き出していく過程こそが、カーリングというスポーツの集団美と言えます。
選手のポジションと叫び声を発する人の関係

カーリングのチームは4人で構成されており、それぞれに役割があります。叫び声の意味をより深く理解するためには、誰がどのタイミングで叫んでいるのかという「ポジションごとの役割」に注目するのが近道です。
指示を出す「スキップ」の役割
チームの主将を務めることが多い「スキップ」は、ハウス(目標の円)に立ち、ストーンが進むべき道筋を描きます。最も遠い位置から全体を俯瞰しているため、ストーンがどのくらい曲がっているかを判断し、スウィーピングの指示を出すのが主な仕事です。
スキップの叫び声は非常に力強く、チームの絶対的な方針を示します。「イエス!」と一言叫ぶだけで、スイーパーの動きを完全にコントロールします。また、作戦を練る際にも「ここはガードを置こう」と大きな声で相談する姿がよく見られます。
スキップは試合の流れを読み、勝負どころを見極める存在です。彼らの叫び声には、単なる指示以上の「気迫」がこもっていることが多く、チームを鼓舞するリーダーシップを感じ取ることができます。スキップの声に耳を傾けることで、チームの戦略が見えてきます。
投げる人の視点と「スイーパー」の判断
ストーンを投げる「デリバリー」の役割を終えた選手は、その後の軌道を見守ります。しかし、実際に最も忙しく声を出すのは、ストーンの横でブラシを構える「スイーパー」の2人です。彼らはストーンの「速度」を誰よりも正確に把握しています。
スイーパーは「ヤップ!ヤップ!」と自分たちで声を出し合い、リズムを合わせて掃くこともあります。また、スキップに対して「これは足りないよ!」と叫んで、スウィーピングの必要性を訴えることもあります。彼らは現場の判断をスキップに伝える重要な役割を担っています。
掃く力だけでなく、ストーンの動きを読み取る「目」と、それを的確に伝える「声」がスイーパーには求められます。激しい運動をしながら正確な情報を叫び続ける彼らのタフさは、カーリングにおける勝利の立役者と言っても過言ではありません。
チームワークが生む叫び声の連携
カーリングは「コミュニケーションのスポーツ」です。叫び声は決して一方通行ではなく、チーム全員で情報を補完し合うためにあります。誰か一人が黙ってしまうと、情報の精度が落ち、ミスにつながる可能性が高まります。
例えば、スキップがライン(曲がり)を見て「イエス」と言い、同時にスイーパーがウェイト(速さ)を見て「ハリー」と呼応する。この瞬時のコール&レスポンスが完璧に決まったとき、ストーンはまるで魔法のように吸い込まれていきます。
好調なチームほど、氷上の叫び声に淀みがなく、テンポが良いのが特徴です。逆に苦戦しているときは、声が小さくなったり、指示が迷ったりすることもあります。叫び声のトーンや頻度から、チームの雰囲気や信頼関係を感じ取るのも、通な観戦の楽しみ方です。
カーリングはマイクが各選手についているため、試合中の会話がすべて聞こえる珍しいスポーツです。叫び声だけでなく、作戦タイム中のひそひそ話まで聞けるのが大きな魅力ですね。
試合をもっと楽しむためのカーリング観戦のコツ

叫び声の意味が分かってくると、カーリング観戦の解像度がぐんと上がります。ここでは、テレビや現地での観戦をさらに充実させるための、ちょっとした注目ポイントをご紹介します。
マイクが拾う「氷上の作戦会議」に注目
カーリング中継の醍醐味は、選手が装着しているマイクを通じて、すべての会話がリアルタイムで聞こえることです。叫び声だけでなく、「今の石はどうだった?」「次はあの石を狙おう」といった具体的な作戦会議まで筒抜けです。
叫び声の意味を理解した上でこれらの会話を聞くと、次にどのような「イエス」や「ハード」が飛び出すのか予測できるようになります。「このウェイトならイエスと言いそうだな」といった予想を立てながら見ると、まるで自分もチームの一員になったような感覚になれます。
また、ミスをした際の原因究明や、お互いを励まし合う言葉なども聞こえてきます。選手の人間性やチームのカラーが最も色濃く出るのが、この音声の部分です。映像だけでなく「音」に集中して観戦することで、ドラマチックな展開をより深く味わえます。
方言や独特の掛け声を楽しむ
日本のカーリングチームには地域性が強く出るという特徴があります。特に北海道を拠点とするチームが多いため、北海道弁(そだねー、など)が混じった会話が聞こえてくることがあります。これは国際大会でも変わらない、日本チームならではの魅力です。
標準的な「イエス」や「ハード」以外にも、チーム独自の合言葉や、ちょっとしたリアクションの言葉が聞こえることがあります。これらは緊張感あふれる試合の中で、選手たちのリラックスした一面や、独特のチームワークを感じさせてくれます。
海外チームの場合は、英語以外の言語での叫び声を聞くことができます。ドイツ語やスウェーデン語など、言葉は違えど叫んでいる時の熱量は同じです。世界各国の言葉で「掃け!」というニュアンスをどう表現しているのか、比較してみるのも面白い観点です。
叫び声から戦況を読み解くポイント
試合の後半、特に接戦になればなるほど、叫び声のボリュームと頻度は上がっていきます。ここぞという場面での「ハリー!ハード!」という絶叫は、その1投にすべてをかけている証拠です。叫び声の大きさと、試合の重要性は比例すると言ってもいいでしょう。
逆に、非常に静かな投球もあります。それは、投げた瞬間に「完璧だ」と確信した場合や、一切スウィーピングが必要ないほど正確なショットだった時です。嵐のような叫び声の後に訪れる静寂、そしてストーンがピタリと止まる瞬間。この対比こそがカーリングの美しさです。
叫び声が止んだ後に、スキップが満足そうに頷くか、悔しそうに顔をしかめるか。そうした選手の反応まで含めて観察すると、戦況がどちらに傾いているのかが明確に分かります。音をヒントに試合を読み解く力を身につけて、一流の観戦者を目指しましょう。
| 叫び声の種類 | 意味・役割 | 注目ポイント |
|---|---|---|
| イエス(ヤップ) | スウィーピング開始 | ストーンを伸ばしたい時の合図 |
| ハード | より強く速く掃く | 選手の全力の動きと表情 |
| ウォー | スウィーピング停止 | 止まった瞬間のメリハリ |
| 数字(1〜11) | 停止位置の予測 | チーム内の共通認識とデータ共有 |
カーリングの叫び声やイエス・ハードの違いを覚えて応援しよう
カーリングの試合で響き渡る叫び声には、一つひとつに論理的な意味と、勝利への強い願いが込められています。「イエス」と「ハード」の違いを理解するだけでも、選手の動きの意図が明確になり、試合の見え方は劇的に変わります。
「イエス」はスウィーピングを始める基本的なスイッチであり、「ハード」はさらに力を込めて粘るためのギアです。そして、距離を伝える数字や、止めるための「ウォー」といった言葉が組み合わさることで、あの緻密な戦略が実行されているのです。
選手たちの叫び声は、氷の上という特殊な環境で、チームの絆を繋ぎ止める命綱のようなものです。次に冬季スポーツを観戦する際は、ぜひテレビの音量を少し上げて、選手たちの生の声に注目してみてください。彼らが何を伝え、何を目指して叫んでいるのかが分かったとき、カーリングというスポーツの真の面白さに気づくはずです。



